鷹の俳人
中山玄彦(なかやまくろひこ)
1940年1月 朝鮮生まれ 東京在住
1986年 鷹入会
1987年 鷹新葉賞受賞 同人に推挙
2003年 俗事多忙のため、退会
(8年間、俳句から離れる)
2011年 鷹に再入会
2015年 鷹俳句賞受賞
2017年 鷹月光集同人
ミニ・アンケート
◆趣味:オープンカーで峠道をドライブすること
◆好きな食べ物:美味しいものならなんでも
◆長所:穏和
◆短所:鈍感
◆苦手:無作法な人、無神経な人
人物評 大西朋
ダンディにしてグルマンな玄彦さん。かつては鷹の副編集長を務め、披講の間合いも的確、聞きほれる声。そんな玄彦さんだが、会食となると様子が変わる。一皿一皿を真剣に見つめ、素早く食べたいものを見極め、躊躇なく口へ運ぶ姿は少年のようだ。
今までで一番美味しかったものを聞いたことがある。メコン川で獲れた川蟹を鉈で割り、胡椒油で揚げたものだという。20代の終わり頃「週刊朝日」の特派記者としてベトナム戦争の地を転々としていた。当時メコン川には死体が流れていることも珍しくなく、川蟹はそれをつついて大きくなったとの噂もあったとか…。
理知的な中にも飄々とした雰囲気を漂わせているのは、ワイルドな経験により培われたものだと納得した。
自選十五句
枯枝のひかりを幹にわかちけり
雨おとのねぎらふごとし薺粥
探梅や檜葉の匂ひに立止り
山眠る鮭の記憶の累々と
冬日の窓倖せ一つひとつ違ふ
十一月遠きひかりを馬歩む
唐辛子いくさ無き世のをみな美し
ていねいに拭ふ梶の葉灯を映す
水澄むや門の欅に凭るこころ
蘆青し十五の記憶疾走す
夏館霧に漂ひはじめたる
釘抜の愚直を愛す雲の峰
赤ん坊に一生が待つ夕桜
美しき対句を得たる田螺かな
窓近き竹のさやぎや春寒し