鷹の俳人
穂曽谷洋(ほそやよう)
1936年 東京生まれ 葛飾区在住
1993年 長谷川双魚門の職場の後輩の誘いで俳句を始める
1994年 鷹入会 藤田湘子に師事
1998年 同人
2004年 鷹新葉賞受賞
2006年 船橋市文学賞俳句部門佳作受賞
ミニ・アンケート
◆趣味:読書、観劇、落語鑑賞
◆好きな食べ物:うなぎ、鮨、湯豆腐、蕎麦屋での一献
◆好きな映画:「東京物語」、「生きる」、「二十四の瞳」、「また逢う日まで」
◆カラオケ:「錆びたナイフ」(ド音痴のため、もっぱら一人カラオケ)
◆苦手なもの:地震、爬虫類
人物評 山地春眠子
長く俳句を作っていると、偶(たまさか)、好調の波に恵まれることがある。「鷹」平成十五年十月から翌年十月号までの穂曽谷洋が、まさにそれであった。この間月光集登載九回、鷹集巻頭一回、推薦三十句に五句選出。「ふるちんのむかしけざやかつくしんぼ」。少量の含羞と適量の諧謔をもって魅力的な人間像を構築する“洋俳句”の骨格はこの時期に形成され、十七年一月に鷹新葉賞を得た。
令和に入っても洋俳句は「けふはけふの日暮を愛しみ端居酒」が推薦句になる(四年十一月)など順調だが、同時に「蟻が蟻曳いて終戦日の正午」のように堅確な作をも成し、芸域を着実に拡げている。要注目の作家の一人である。
自選十五句
小鳥来ぬ賢治の村の観光課
長き夜や学成り難く亀を飼ふ
かなかなや座職は手元昏むまで
足袋脱いであはあはと家ありにけり
ふるちんのむかしけざやかつくしんぼ
狐鳴く夜なり出自を子に話す
ひぐらしや少年になるまで歩く
職業欄空白雁の渡るなり
呼鈴不通梅雨さむざむと生家あり
金魚売月を濡らして帰りけり
チャップリン忌なり瓦斯燈に雪が降る
生家売り掌に秋冷の鍵残る
この先もずつと老人鰯雲
けふはけふの日暮を愛しみ端居酒
冷奴灯に誘はれて灯を点す