鷹の俳人

有澤榠樝(ありさわかりん)

有澤榠樝(ありさわかりん)

1951年12月 高知県高知市生まれ
1984年 鷹入会 藤田湘子に師事
1986年 鷹新人賞
1989年 鷹春秋賞
1993年 鷹俳句賞
2003年 俳句研究賞
2012年 第一句集『平仲』
俳人協会会員

ミニ・アンケート

◆趣味:現実逃避、ミステリー小説、捕物帳、松本潤鑑賞
◆自分を動物に喩えると:蛸
◆学生時代のあだ名:クラゲ
◆好きな映画:「天井桟敷の人々」「サムライ」「僕は妹に恋をする」
◆苦手なもの:文章、手紙を書くこと、あまりにも苦手で文字にもできないものが一つあります。

人物評 竹岡一郎

 俳句には様々な面がある。文学、座、挨拶、諧謔、その奥に「俳句」としか呼びようのない何かがある筈だが、榠樝さんはその「奥にある何か」を絶えず探り、試行している感がある。
 人柄はこれ、純情極まれり。かつて藤田湘子先生に、酒席で声を掛けられただけで、感極まった榠樝さんの目がみるみる潤んでいった様を、私は何度も見ている。鷹という結社を、最も純粋に愛する一人でもある。その純情さで以って、俳句の千変万化の秘密を求め続けている。
 好奇心旺盛であるせいか、榠樝さんはいつまでも歳を取らない。言葉が歳を取らぬ如く、俳句の奥処への探索者が艶にして不老なのは当然か。俳人生において、榠樝さんは永遠の純情少女なのだ。

自選十五句

蛤になつちやふばかだから

すりばちとすりこぎは対むめの春

有明のわれも不憫や初景色

秋いくたびかぼちや看経南山寿

本のやうにおまへをひらく月のひかり

おむすびがころがりたがる春の山

雲の秋目を交はすなく

春笋のひなさきうゐのおくやまに

シュレディンガーの猫を問答花粉症

転生の拙をかなしむ冬瓜にて

さはられて春椎茸の襞おぼこ

おそるおそる一つ葉になつてみる

盆の灯の浅く流るる畳かな

鳥引くや襖に古ぶ青海波

宝船好色丸と同じ江に

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