鷹の俳人
栗原修二(くりはらしゅうじ)
1952年3月生まれ 千葉県出身 東京都在住
2004年 鷹入会 藤田湘子に師事
2005年 湘子死去により小川軽舟に師事
2010年 鷹同人に推挙
2017年 鷹新葉賞受賞
2022年 第一句集『囀に』上梓
俳人協会会員
ミニ・アンケート
◆趣味:釣、旅(若い時の放浪など)
◆好きな映画:「カッコーの巣の上で」、「さらば冬のかもめ」
◆好きな食べ物:蕎麦、とろろ、珈琲(マンデリン)、日本酒
◆長所:誠実 短所:ポイ捨てなどが見逃せない(危険な目に遭う可能性)
◆よく歌う曲:「歩いて帰ろう」(斉藤和義)、「満ちてゆく」(藤井風)
◆苦手なもの:牡蠣、火を通した貝
人物評 兼城雄
修二さんを思うとき、〈紫陽花の枯鞠妻を残し来し〉という句を思い出す。修二さんは紳士的で、よき夫・よき上司の雰囲気をまとっているが、その優しさはやわらかく失われやすいものへの感受性から来るものだと思う。
修二さんは現代社会を鋭く批評する人生哲学も持ち合わせているが、この両者は繋がっている。紳士の優しい視線は、現代社会という冷たい場所で生きている、脆く儚いものたちへと注がれているのだ。だからこそ、〈またもがく蠅にもどりてながれけり〉という句は、私には重く響いた。修二さんは優しいけれど、甘くならない。どんなにあがいても、この世には守れないものがあるという事実から、俳人は目を逸らさないのだ。
自選十五句
畳まれしセーターの胸やすらかなり
ふへふへと翁の機嫌落鰻
賀状書くガザの瓦礫の画像閉ぢ
壊す家寒し土足に踏む畳
より広き水恋ふ水や流灯会
またもがく蠅にもどりてながれけり
三椏の花青空に諂はず
秋刀魚定食表彰状のごとく受く
ファンに曲届けるやうに銀杏散る
裕明に霧一句露二十余句
母の日の母にゆつくりわが名湧く
寝顔より抜きとる眼鏡うららけし
本ひらく微光を頬にクリスマス
引潮は月への恋慕足穂の忌
読まれざる詩歌はやがて囀に