鷹の俳人
大井さち子(おおいさちこ)
1960年1月 長野県生まれ 坂城町在住
1997年 鷹入会
1999年 鷹新人賞準賞
2009年 鷹新葉賞
第一句集『秋の椅子』上梓
2015年 鷹星辰賞
俳人協会会員
ミニ・アンケート
◆趣味:カラーストーン鑑賞(自然界にできた美しい色石の歳月に思いを馳せます)
薔薇、盆梅を育てること
◆好きな映画:「羊と鋼の森」
◆長所短所:どちらにしても大雑把
人物評 押田みほ
さち子さんと初めて会った時の印象はエレガント。隙のないおしゃれで近づきがたい感じ。句座にまだ慣れていなかった私は、少し緊張したことを思い出す。
吟行にはトヨタのセリカで颯爽と現れる。エレガントな装いをまとう男っぽさに気づくのに、そう時間はかからなかった。
黒がクールな佇まいの奥に隠し持つ俳句への思いは熱い。同人総会に参加した帰りの新幹線で、おもむろに鞄から鋏と紙を取り出し、短冊を作り始めたさち子さん。にわか句会は降車駅到着まで続いた。
あまり多くを語ることはないが、自然詠への思い入れの深い信州人である。これからも多彩な景色を見せてくれることだろう。
自選十五句
水底に鈴鳴るごとし春夕
雲疾し棹姫鷹の明眸に
羊歯深く泉鳴りをり蟬丸忌
八月はひかりの棒を呑むやうに
かなかなに本をはなるる文字の列
秋の椅子人かはり雲かはりつつ
萩の寺揚羽のやうに僧住める
秋風の子よ問へば否すべて否
巨き鳥かむさるやうに花野暮る
天狼やみづうみは息凝らしつつ
わが肩に中也の雪の降つてをり
さみしくて寒暮ちひさき子を産みぬ
羚羊の足跡雪に深く青く
鹿のごとくチェンバロ立てり雪夜なり
弓を引く少年狩のにほひせり