鷹の俳人

蓜島啓介(はいしまけいすけ)

蓜島啓介(はいしまけいすけ)

1981年生 埼玉県出身
2011年12月鷹入会
2013年 鷹新人賞 鷹同人に推挙
2015年 鷹俳句賞 
俳人協会会員

ミニ・アンケート

◆趣味:ピアノ、クラシック音楽全般
◆好きな食べ物:カレー、寿司
◆好きな映画:北野武「ソナチネ」
◆コレクションしているもの:楽譜

人物評 兼城雄

 蓜島啓介さんが『鷹』に入会して、句会をともにするようになった。句稿に書かれた啓介さんの字は端正で、流れるように美しかった。啓介さんはピアノを弾き、リサイタルも開催していた。美意識に貫かれた句群はすぐに注目され、あっという間に鷹俳句賞を受賞した。
 どんな分野でも成功するのだろうと思える人が、なぜ俳句という小さな詩型を選んだのだろう、と不思議に思うことがあった。もしかすると、時折、作品の中に顔をのぞかせる「むなしきもの」への興味が関わっているのかもしれない。俳句は深い沈黙を抱えた文芸である。美しい音を奏でるピアニストは、俳句の沈黙にこそ魅了され、音にならない「むなしさ」を奏でるために、俳句を書き続けているのかもしれない。

自選十五句

海岸に地球儀流れ着きて冬

愛し合へり鯨のやうに深く潜り

一切の影なき大河息白し

ふらここは思ひ出す場所星見る場所

花冷や点字しづかに指を待つ

十秒で牛丼と夏来たりけり

ひらきたるルソー画集の草いきれ

夜を駆くるハーレーダビッドソンと蛾と

忘れけり虹立つてゐしこと以外

いまも死者に泉があつて鹿がゐて

人間を積みたる電車原爆忌

一生涯使はぬ言葉辞書に冷ゆ

鏡向く人形ひとつ冬の暮

誰もゐない庭に冬日が射す写真

鈴の音を聞きしは我と凍蝶と

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