鷹の俳人
奥坂まや(おくざかまや)
1950年7月生まれ 東京都出身 東京都在住
1986年 鷹入会 藤田湘子に師事
1987年 鷹新人賞 鷹同人に推挙
1989年 鷹俳句賞
1994年 第一句集『列柱』上梓
1995年 同句集で第18回俳人協会新人賞
2005年 第二句集『縄文』上梓
2011年 第三句集『妣の国』上梓
2021年 第四句集『うつろふ』上梓
俳人協会会員 日本文藝家協会会員
NHK文化センター・朝日カルチャーセンター講師
著書―『現代俳句の鑑賞事典』(編集・共著)
『鳥獣の一句』『飯島晴子の百句』他
ミニ・アンケート
◆自分を動物に喩えると:アカウミガメ
◆学生時代のあだ名:オッチョコ
◆好きな映画:ハワード・ホークス、小津安二郎監督作品
◆カラオケでよく歌う曲:「カスバの女」「圭子の夢は夜ひらく」
◆苦手なもの:閉所恐怖症
人物評 加茂樹
まやさんと吟行に行ったときのことだ。祭があり、田に点在する古墳を神輿が巡っていた。畦道を去っていく神輿に、まやさんは一人ついて行ってしまった。勿論その後戻ってきたが、まやさんがそのまま時間の狭間にいなくなってしまうような、微かな不安が私を過った。「俳句は季語への供物」は鷹新人賞受賞の際のまやさんの言葉だが、彼女は季語という時間を貫いて存在するモノに出会った際、そこに没入して、一句を得て戻ってくる。
まやさんは生き物が大好きで、私たちは野生動物を求めてケニアを旅をした。ワニやチーターを見つめる彼女のまなざしも吟行のとき同様ひたむきだった。あの時もまやさんは、動物たちの世界に没入していたのだと思う。
自選十五句
地下街の列柱五月来たりけり
玉虫や熊野の闇のどかとあり
嫁の座といふ冬瓜のごときもの
身のうちに鮟鱇がゐる口あけて
万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり
樹下の椅子偶数なれば風死せり
蘭鋳の爆発寸前のかたち
手がありて鉄棒つかむ原爆忌
若楓おほぞら死者にひらきけり
坂道の上はかげろふみんな居る
いちじく裂く六条御息所の恋
息の根のごとき海鼠を摑み出す
ひろびろと波打つ布のやうに春
桜散るいつもわれらを置去りに
春の星この世限りの名を告ぐる