鷹の俳人
此雁窓(このかりまど)
1985年10月生まれ 仙台市出身 京都府在住
2022年7月 鷹入会 俳句を始める 小川軽舟に師事
2024年 鷹新人賞受賞
2025年 鷹同人
ミニ・アンケート
◆趣味:料理、読書、地図を眺めること
◆好きな食べ物:りんご、駅そば、牛タン定食
◆好きな映画:「アマデウス」「ボルベール〈帰郷〉」
◆苦手なもの:飛行機、方向感覚(常に前が南)
◆自分を動物に喩えると:タヌキ(化かすのは下手)
人物評 椎名果歩
本名のアナグラムを元にしたという俳号「此雁窓」は詩的な香りをまとう。行く雁を見遣りつつ思索に耽るような奥ゆかしさと、窓から身を乗り出さんばかりに辺りを見つめる好奇心、そんな二面を持つ窓さんを想起する。さらにその窓にかかる風鈴を思う。硝子製の江戸風鈴というよりは鉄製の南部風鈴。その余韻をひく響きが窓さんにしっくりくるのだ。
五人会では素早い反応と行き届いた振る舞いで司会進行をこなす。一方、ほんの折々、関西支部句会後の反省会兼飲み会などで垣間見せる予想外の楽しい言動は、一緒にいる私たちを飽きさせない。
命の光や影に触れて紡ぎ出される言葉には生々しい実感がこもる。これからも窓さんは句の世界をやわらかく押し広げてゆくことだろう。
自選十五句
流氷や獣脂滾らす吊りランプ
星涼し窓いつぱいに葉のさやぐ
缶詰の中の沈黙枯木星
ざわざわと世界をよぎる雪の影
雲梯に乳房重たし春夕焼
手枕に脈打つあたま春の闇
肩入れて洗ふ寸胴梅雨深し
きらきらと在り東京の片蔭は
川霧や先に眠れるひとの夢
沼涸れて恥とも怒りとも違ふ
火を吹けば火になる息や雪催
幼子が鏡見てゐる昼の雪
夾竹桃しづかな道の来てをりぬ
夏掛の頬にやはらか死にたくない
湯に濡れて子の眉黒しちちろ鳴く