鷹の俳人
髙柳克弘(たかやなぎかつひろ)
1980年、静岡県出身、東京都在住
2004年、第19回俳句研究賞受賞。現在、俳句結社「鷹」編集長。読売新聞朝刊「KODOMO俳句」選者。早稲田大学講師。
句集に『未踏』(第1回田中裕明賞)、『寒林』。
評論集に『凛然たる青春』(第22回俳人協会評論新人賞)、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』『究極の俳句』。
児童小説に『そらのことばが降ってくる ――保健室の俳句会』。
鑑賞書に『芭蕉の一句』『蕉門の一句』『名句徹底鑑賞ドリル』など。
2017年度、Eテレ「NHK俳句」選者。
ミニ・アンケート
◆趣味:温泉めぐり
◆学生時代のあだ名:かっくん
◆好きな映画:『アマデウス』
人物評 川原風人
髙柳さんは藤田湘子最晩年の愛弟子である。そして、俳句界全体の若手の旗手としても活躍を続けている。句集『未踏』での若々しい抒情、『寒林』での儚みに満ちた厭世観……自身と世界との対峙に意識的で、同じ場所に留まるところのない作家だ。
また〈本書くに読む本の数柚子の花〉の句にある通り、芭蕉等の俳句研究者でもある。ただ、浪漫的で俳句以外への頓着が少なく、どこか放っておけない一面もある。
ここのところの髙柳さんの興味は、普遍性の失われた現実世界での「真実」を求めて句作することにあるという。より求道的に、今後も我々鷹の作家たちを牽引していってくれることだろう。
自選十五句
ことごとく未踏なりけり冬の星
つまみたる夏蝶トランプの厚さ
うみどりのみなましろなる帰省かな
洋梨とタイプライター日が昇る
眠られぬこどもの数よ春の星
ぼーつとしてゐる女がブーツ履く間
サンダルを探すたましひ名取川
月とペンそして一羽の鸚鵡あれば
嗚咽なし悲鳴なし世界地図麗らか
ビルディングごとに組織や日の盛
忘るるなこの五月この肩車
列聖を拒みて鳥に花ミモザ
子にほほゑむ母にすべては涼しき無
疫病が来るよ猫の子雀の子
部屋にゐて世界見通す寒さかな