鷹の俳人
加茂樹(かもいつき)
1971年9月生まれ 宮城県出身 東京在住
2003年 鷹俳句会同人轍郁摩氏の手引きにより俳句を作り始める
2004年 鷹入会 藤田湘子に師事
2005年 湘子逝去にともない小川軽舟に師事
2009年 鷹新人賞受賞
俳人協会会員
ミニ・アンケート
◆趣味:動物を見ること、遠州流茶道
◆好きな食べ物:スイカ 豚肉
◆長所と短所:よくいえばおおらか悪くいえば雑。よく転ぶこと。
◆自分を動物に喩えると:カピバラ
◆好きな映画:「ポネット」
◆コレクションしているもの:かえるグッズ
◆苦手なもの:声の大きすぎる人
人物評 桑名星精
樹さんといえば「おっちょこ」の数々を誰もが思うだろう。食いしん坊ゆえの句も印象深い。
その一方でsisterhoodという言葉が浮かぶ。「女性同士のひとつの理念のもとの連帯や共感」という意味の方だ。樹さんは関わるコミュニティでこのsisterhoodをやわらかく形成しているように思える。良質なsisterhoodに欠かせないのは、逆説的にしっかりとひとりでいられることだ。
死亡退院一名朝顔のひらき
当直医が死に立ち会った夜は静けさを経てみずみずしい朝を迎える。当直日誌に死亡退院一名と記して任を終える。そこには凝縮された体験のひとり性が感じられる。
樹さんの源泉はこのひとり性にあるのではなかろうか。
自選十五句
オルガンの鍵盤浅し春の雨
蝌蚪の紐おのが重さにちぎれけり
こころ白くなるまで抱かれ桃の花
逆光の夕日ざらつく菜花かな
肉叩く音に粘りや養花天
穴子裂くをとこの眼澄みゐたり
言ひ切つてふくらむ小鼻ソーダ水
大鍋にすべらすカツや夜の秋
夕涼や汽水にひかる魚の鰭
紅葉且つ散るフロイトの読書会
死亡退院一名朝顔のひらき
歳晩や音撥ねまはりジヤズピアノ
命消えし肉体重し冬の月
冬暁や患者の息と吾が息と
今日のこと今日話したきおでんかな