鷹の俳人
安藤辰彦(あんどうたつひこ)
1940年生まれ 東京都出身 横浜市在住
1989年 勤務先の広告会社の社内句会で俳句を始めた
1993年 小浜杜子男さんの紹介で鷹入会
1998年 鷹同人
2006年 鷹新葉賞受賞
NHK学園俳句添削講師委託され現在に至る
2010年 第17回西東三鬼賞受賞〈惑星間会議ひまはり選出す〉
ミニ・アンケート
◆趣味:写真(鷹のホームページに花や風景が載ったことも)、映画(シナリオ研究所卒)、読書(図書館までの散歩)
◆好きな食べ物:貧しく育ったので今は何でもおいしい。カフェ・ラテ、桃
◆短所:自己中心。信号見落としでタクシーにはねられた。
◆長所(?):悪運が強い。入院せず軽傷で済んだ。
人物評 宮木登美江
22年前になる。湘南地区の数名で、月一回の吟行会を発足。辰彦さんをはじめ、歩くのを苦にしないメンバーだった。今も続いているが、歩く距離は半分に、メンバーも少し変動。この会の名はラ・フランス。〈夕方を急く用もなし〉の仲間の句を見て、「用もなしか、洋梨だ。ラ・フランスだ。」と辰彦さんが呟いたことから、句会名に。
自己中だと、ご自分で公言して憚らない。強風雨の中突堤に立ち、傘を海に飛ばされたり。天気予報も雨、実際に降ってきても傘を持って来ず平然。気の向く方へさっさと行く。それでいて句になりそうな素材を見つけた時の嬉しそうな笑顔。独特の飛躍の句を生む感性は、博識と相俟って講評もきびしい。この姿勢を貫くのが辰彦さんの真骨頂である。
自選十五句
海鳴に応ふ山鳴実朝忌
春日傘妻は太つてしまひけり
狸失せ程なく妻の戻りけり
少年の夢精の刻を雪女郎
ヴと震へ掌に来るメール夜のプール
一羽来て連れを待つらし初雀
交番に首さし入るるさくらかな
日を肩に雲の巨人や草田男忌
初晴や一に始まる漢和辞書
スケートの両手忙しく転びけり
酷暑に紛れ集団死刑十三名
炎天や絶えず動ける護衛の眼
東京は永遠に途上や鳥雲に
見えぬ人の聴きゐる瞼小鳥来る
アラララと始まる嗽秋うらら