星辰賞受賞作品

第11回星辰賞受賞作品

ガラスペン 西嶋 景子

忽然と空きし病床冬の月

葬儀屋のそそと働く霜夜なり

手を入れて薄き集合ポスト凍つ

太陽の雲より白し冬木の芽

便箋に鳥の透かしや春を待つ

新刊に手書きのポップ春隣

天と地のあはひ窮屈燕来る

つちふるやタイヤ鎧へる船着場

ジャグジーに腰を浮かせて万愚節

初花や事務所の大きカレンダー

朝桜オフィスに人のゆきわたる

牛乳瓶の口ぽつてりと花曇

満開の桜の幹のがらんどう

鰻屋に靴預けたり夕桜

タクシーのドア開けて待つ桜かな

鞦韆のきいと一番星揺らす

朧夜やインクの昇るガラスペン

駅見えて休む坂道藤の花

春ふかしエンドロールの最後闇

逝く春の指輪を箱に沈めけり