新葉賞受賞作品

第37回 鷹新葉賞作品

西山純子

闘鶏や寝惚け色なる雑木山

片折戸雨の連翹避けて入る

辞書買うて重きがうれし木の芽風

春灯やピアノ売りたる部屋の壁

便箋の夢二の駒絵明易し

半玉の白き手が刎ね麻暖簾

雨靴に濡れし踏込祭果つ

歩板ゆらし上船単帯

潮汲んで桟橋洗ふ夕焼かな

虹を見る少年犬を曳きながら

浜晩夏首突き出して壜埋まる

夏痩の顔を映して鏡拭く

道に積む水禍の畳秋の雲

みせばやや約束したるあとの憂さ

兜煮の鯛の受口豊の秋

水洟や雑居ビルの灯とびとびに

息白し口縄坂を下る僧

焼入のずぶと水刺す寒波かな

初閻魔蛇口のさらし袋錆ぶ

文旦の熟るる大辺路沖荒るる

畠 梅乃

賢治忌や朝まだ遠き寝台車

葛が葛這ひのぼりゆく虚空かな

秋晴や家移りに積む箱の数

秋深し耳に槌骨きぬた骨

スチームや小さく坐せる老教授

レノン忌の青空とりあへず平和

雪吊の縄にほふなり日本海

手袋を忘れてゆきし手を思ふ

なやらひや夜の深まる竹の奥

寄生あまたつけし神木あたたかし

眩しさに芯あり蝶のくる岬

練絹の指につめたき朧かな

蜃気楼ペットボトルの水ぬるむ

老鶯や靄の底なる湖畔の灯

先生とバス待つ茅花流しかな

見えてゐて水底深き青葉かな

夕焼や迷子のやうにポスト立つ

贋物も似合ふわたくし水中花

冷蔵庫運び出されて廃業す

青葉の夜木偶人形は肩で哭く