新葉賞受賞作品

第39回 鷹新葉賞作品

大野潤治

早梅やベビーカステラ売る巨漢

風船の萎んで紺となりにけり

ヴンと点くギターアンプや霾ぐもり

石鹸玉割れぬ見えざるものに触れ

ナイターの大敗の夜のラッパかな

対岸の島は土砂降り仏桑華

薬莢のごとくかなぶん転げ落つ

香水のきつい上司に代はりけり

砂利灼けて父を憎みし夕あり

裸のまま煙草吸ふ時だけ男

鰯雲無職の父と球場へ

天高く空缶が転がつてゐる

秋天や恒河に人の滴滴と

吾妻橋渡りて秋の灯の疎ら

夜の底に明るき銀杏落葉かな

仕舞ふため崩す積木や日短

枯芒揺れやまず沖輝けり

裸木やニコライ堂に聖歌満つ

改札に愚図る女や年の暮

働いて働いて死ぬカキフライ