新葉賞受賞作品

第40回 鷹新葉賞作品

橘田麻伊

天日の燁然とあり種浸し

るるるると花びら堀へ散りゆけり

母の忌の寺領の桜空占むる

杉山へ直刺す朝日花会式

思惟仏の嫋やかな指鳥の恋

今年竹色凛然と雨の中

春煖炉マチスの女腕豊か

雨空へ聳つ都庁雀の子

梅雨寒の茶粥に臓腑覚めにけり

窓に迫る吉野惣闇冷し酒

沢水に掌のやすらぎぬほととぎす

峰雲に鬨の勢ひや甲斐の国

山裾の静かな流れ盂蘭盆会

トレーラー曲がる熱風休暇果つ

是非もなく心渇く日曼珠沙華

冷やかに白くだけ皿割れにけり

村老いて柿の実の照るばかりなり

七五三城下の河に朝日満つ

枯芝を翅あるものの光り過ぐ

枡売の小豆艶やか寒明くる

椎名果歩

蕃茄かじる夕日貫くワンルーム

牧水忌夜雨の天は地に親し

手鏡を丸く拭きをる無月かな

星月夜嗽の背中素直なり

救急車右折を叫ぶ夜寒かな

にほどりや岸に水輪の届かざる

小六月胸にグラスを磨きをり

カムパネルラ待つ汽車の椅子雪明り

冬の日や外して大き掛時計

眩しさに目玉引つ込む深雪晴

ビル風に冬の噴水ゑぐれけり

止まりつつバスのドア開く落葉かな

寒雷や原稿用紙文字拒む

横つ面張る貨車の風柳の芽

つばくらや台車の弾み掌に押さへ

鍵を刺す濁音桜蘂降れり

目薬に外す眼鏡や春深し

ぼうふらの吸ひ付く水面月の影

烏追ひ鳴き飛ぶ烏梅雨深し

白日傘さらさら巻いて今日忘る