新葉賞受賞作品

第42回 鷹新葉賞作品

鶴岡行馬

読初の帙の鞐をはづしけり

杉の秀にゆうらりゆらり初鴉

つちふるや共稼ぎして家一軒

桜咲くかの日屍体置場となりし母校

竹が竹搏つて八十八夜かな

蕗の香や土やはらかき社人道

解纜にマーチ高鳴る五月かな

キャンプファイヤー輪唱山にひびきけり

朝焼や珈琲豆の湯に膨れ

雲海の怒涛巌を越えなやむ

名月や帯跡白き虚子全集

木賊より木賊の影の濃く長し

喫茶店より敗荷の雨が見え 

糠漬に蕪足していざ顔見世へ

肉叢がスケートスーツ圧し返す 

語部の厚司焔のにほひせり

太陽へ海鼠腸掲げすすりけり 

落葉もろとも一炬に附して古手紙

底冷や夢寐に職場のまざまざと

春を待つ書斎の底に蟠踞して