鷹俳句賞受賞作品

第56回 鷹俳句賞作品

志田千惠

秋澄むや国境に出すパスポート

蠟燭を吹き消す濡れ場西鶴忌

マフラーや女に逢つて来たる顔

擂鉢に熱き煎胡麻年の宿

正義面して襟立ててレポーター

薄ペラな機内の毛布遠きガザ

虎落笛ねむりの尻尾捉えたる

磯鷲の羽音庭師の腰の鉈

欄外にポンと捨印春寒し

春暁の白き巨船が序曲なり

五月蠅なす神や街から人消ゆる

隠れ住む腐草蛍となるまでは

麦藁帽かぶりいつでも逢えたのに

蟇穴を退っ引きならぬ世に出づる

薔薇に吹く風思いきりハグしたし

茄子漬けて当座凌ぎの金貰う

炎えながら雲は輪郭崩し初む

麦熟れ星土葬の穴の累々と

昼寝の町めく時のに沈み

閉居して蟭螟の鳴く声聞きぬ