鷹俳句賞受賞作品

第57回 鷹俳句賞作品

川原風人

冬蝶のゆるされてゐる日差かな

さみしさに金欲しがる子夕時雨

雪虫と言ひてしばらく黙りこむ

影連れ立つ相談室の寒灯に

繭玉や一間の冷えの足裏より

しやぼん玉吹ききつて身のうつろなる

バーのママの昔の写真蛍烏賊

今生の蜜引き椿落ちにけり

漂着のごとくわれあるさくらかな

いちまいの鏡を信ず春の昼

ジャニス・ジョプリン吊革握り聴く暮春

初夏の教卓につく両掌かな

動かぬもの引き摺る猫や青葉闇

香水や鏡に映す自傷痕

生ひ立ちを階段に聞く夕立かな

逝く夏や日輪に鳥消失す

男あり月に縛られゐたりけり

贄のごとしづもる村や真葛原

穭田や炎渦なすドラム缶

髪からだ記憶たましひ霧となる