鷹の俳人
原信一郎(はらしんいちろう)
1953年6月 東京生まれ 東京在住
2012年 鷹入会(俳句を始める)
2015年 同人
2016年 新葉賞受賞
ミニ・アンケート
◆好物:ラガービール、浦霞、焼き鳥、カツオのたたき
◆好きな映画:邦画「飢餓海峡」「仁義なき戦い」「父と暮せば」、洋画「ディアハンター」「プライベートラ イアン」「グラントリノ」など
◆カラオケ:「想い出の渚」(ワイルドワンズ)、「北へ」(小林旭)
◆苦手なもの:全体主義、軍歌、爬虫類
人物評 斉田多恵
一言で表すと人事句の達人である。家族や社会といった俗に流れそうな事象も、原さんの手にかかると骨太で品格を持った一句になる。そんな唯一無二の個性から、平成27年に同人に推挙され、翌年鷹新葉賞を受賞した。
互いに都会育ちのサラリーマンで酒好きという共通点から、意気投合するまでに時間はかからなかった。酒席では、社会を賑わせている政治・経済から芸能ニュースまで、話題は豊富である。元文学青年という一面もあってか、映画や文学にも詳しい。少々憂鬱な出来事も原さんが良く通る大らかな口調で話せば、ユーモラスで哀愁を帯びた物語のように感じられるから不思議だ。
この世を客観的に捉える視線と隠し味のような繊細な優しさ、そんな絶妙なバランスが原さんの俳句の魅力なのだと思う。
自選十五句
曝しけり社史と定年感謝状
香水や開演前の淡き闇
病院の声なきテレビ原爆忌
トルストイ硬貨に旧りぬ夜の秋
空港の動く歩道も夏の果
ケアマネの分厚き手帳秋暑し
稼ぐこと忘れし身体衣被
独逸車の硬きシートや秋気満つ
爽やかや手話に揺れたる耳飾
飲み干してなほ香り聞く新酒かな
銃口の深き暗闇ケネディー忌
平日は老人の町石蕗の花
東京に倦みて離れずつばくらめ
月涼しサザン流して家族葬
親の亡き自由日暮の氷水