新葉賞受賞作品
第43回 鷹新葉賞作品
山中望
門松の大きIT企業かな
人日の曇れるままに暮れ初むる
涅槃図の翳りて雨の降り来たる
野遊や竹の割箸ちよつとエコ
レジ袋飛び去る空や仏生会
ビルの窓書類山積み黄砂降る
囀やこの世知らむと赤子の瞳
竹箒曳き老人や花吹雪
軽暖やケバブどさどさ削らるる
田に残る足跡深き目高かな
茶畑を走るトロッコ夏の霧
押し合ひて電車降りけり夕焼空
浮世絵の女すらりとちちろ鳴く
爽かや窓大いなる洋菓子屋
秋晴や鯉の往来華やかに
大風の影無く吹ける秋思かな
総身の歩みて蛸や磯小春
キャリーケース轟かせ行く落葉かな
ヘッドホン溢れボカロや神の旅
翡翠を危ふく支へ蒲枯るる
第43回 鷹新葉賞作品
加藤又三郎
短夜やめらめら喋るユーチューバー
海霧の岬に何を求めゆく
みんみんや雨の香のこる旅鞄
魚屋の秤にさかな原爆忌
アメ横の客引きどかす残暑光
ふだん話さぬ部下の提案新酒酌む
冬の日や空にうすまるアナウンス
日銀のはめ殺し窓ふゆの虹
あおぞらのしずけさの降る初詣
妻の未来一緒に悩む布団かな
ボクサーに疵なき鏡冴返る
早春や出窓打ちたる鳥の胴
万愚節換気扇より人のこえ
昼食のあとの白昼沈丁花
汗照らすジムの鏡の男たち
東京の巨大な時間新社員
火葬あと空みずみずし冷し酒
麦焼酎ふきげんな妻其処におり
コールセンター一人ずつ処理麦茶飲む
尖りだす登山の息よまだ見上げぬ