新葉賞受賞作品

第44回 鷹新葉賞作品

竹本光雄

星座みな地球を向けり虫時雨

ひめむかしよもぎ運河に磧なし

象死して記事となる国鰯雲

自分史の目次簡単草の花

曼珠沙華絡まりし風離さざる

白紙からはじめる朝や柿紅葉

弁当の飯に重心冬ぬくし

地下街をうすき影ゆく寒さかな

狂ひても止らぬ時計冬の蝶

着ぶくれて都塵の小さき影となり

立春や星数ふれば星ふゆる

ペット屋の犬に名のなし春の雪

山よりも大き山影種を蒔く 

ビル潰し生まるる日向孕猫

春めきて渚に海の解けをり

新駅の白き匂ひや夏近し

複写機をはみ出す光新樹の夜 

雨粒は空に残らず桐の花

夏果や真珠にのこる海の冷え

ビル街の見えぬ太陽吾を灼く

第44回 鷹新葉賞作品

中野こと子

わき水のやがてせせらぎ竹の春

一雨に葉先鋭く末枯るる

逆潮の河冬落暉乱反射

着ぶくれてパンも詩集もポケットに

首筋に日差しちりちり十二月

冬木の芽はじめて友の肩を抱く

汽笛鳴る官舎の肩にオリオン座

もう腹に戻せぬ吾子の息白し

風花の空へ飛び込みボール受く

農園にポプラ一本鳥帰る

さへづりや岩場に乾く鹿の骨

朝桜しやりりとシャツに腕通す

着陸へ春夕焼の雲の中

苺摘む苺の肌にふれぬやう

風道の苗のそよげる植田かな

巣のふちに胸ふつくらと燕の子

日傘ゆく葉騒の影をすべらせて

十階の社食の窓に秋の虹

鉛筆の文字は滲まず敗戦日

富士山頂肺の底まで星月夜