鷹の俳人

加藤又三郎(かとうまたさぶろう)

加藤又三郎(かとうまたさぶろう)

1977年 東京都千代田区生
2016年 鷹入会
2020年 鷹同人
2021年 句集『森』出版
2024年 鷹新葉賞受賞
俳人協会会員

ミニ・アンケート

◆趣味:登山、鄙びの旅、政治活動
◆好きな食べ物:和食の手料理
◆長所と短所:長所 好奇心に正直 短所 勝手気まま
◆好きな映画:コーエン兄弟監督の映画
◆カラオケでよく歌う曲:「覚悟はいいか」(ケツメイシ)

人物評 砂金祐年

 不思議な男である。「風の又三郎」に由来する俳号のとおり、皆と同じ場所にいても、わずかにずれた位相に身を置き、別の光景を見ているかのように、静かに佇んでいる。
 その視座は俳句にも表れている。彼の句の多くはどこか異界めいていて、時に不気味ですらある。それは単なる詩的装飾ではなく、社会に対して彼が感じる違和の具現化である。この五濁悪世にあって純粋であるがゆえに傷つき、それでもなお見つめ続けようとする眼差しが、句に特異な透明さを与えている。彼にとって俳句とはこの世界に下ろす錨であり、祈りなのだ。
 そんな彼も酒が入ると少しだけ饒舌になる。居酒屋で存分に酌み交わし、語り合った別れ際、握手した又さんの掌は力強く、そして温かかった。

自選十五句

廃駅は日と綿虫のただなかに

寒雀火の粉のごとく散りてなし

年礼や浄瑠璃坂の上の月

六道のどの道踏むや虫の闇

通さるる奥の止まり木受難節

春の闇血は眠れずに冴えている

短夜やめらめら喋るユーチューバー

ボクサーに疵なき鏡冴返る

冬の日や空にうすまるアナウンス

片麻痺患者の爪食い込む手ひらけば汗

妻の未来一緒に悩む布団かな

海霧の岬に何を求めゆく

東京の巨大な時間新社員

新緑に向かってランニングマシーン

古着屋の古着の呼吸月おぼろ

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